あとつぎ事業(事業承継)のプロジェクト実例・ノウハウを発信/経営者になるという選択肢|ボルブコンサルティング株式会社

対談インタビュー①前経営者と語らう

2025年2月、弊社のあとつぎ事業(事業承継)の第1号案件がクローズしました。50年以上の歴史がある日本カーヴィング株式会社から殺菌乾燥機などの製造・販売事業を譲受し、弊社子会社であるミッケン株式会社で事業を引き継いでいます。

今回はミッケン株式会社の代表取締役・工藤と弊社代表・和田、そして事業を譲った日本カーヴィング株式会社の代表取締役・安井の3人の対談が実現。あとつぎに関わるアレコレを聞いてみました。40歳ほど年齢が違い、キャリアも異なる3人の対談です。事業承継のリアルとともに、働き盛りのエネルギー、年配者の言葉の重みを感じるインタビューとなりました。

世の中にないモノをつくるべく誕生したクリアレディ

安井

板金店での営業を経て独立。最初は板ばねをつくっていたんですよ。要するに板のスプリング。例えば、冷蔵庫や電子レンジのドアのような開け閉めする場所に使われるものですね。

30代のころに、のちに弊社の主要製品となったクリアレディを世の中に送り出しました。当時、手を洗ったあと、それを乾燥までして手荒れを起こさないようにしようという商品はなかったんですよ。水分を飛ばすための風も出す、熱も出す、手荒れをさせない、この3つをやるという発想がなかったんでしょうね。


和田

そういう感染もふくめた手をいたわる意識が、当時はなかったのかもしれませんね。私の子どものころ、公衆トイレにタオルみたいなものがあって、それをがらがらって回して使っていましたね。当時はタオルでふくっていう文化でした。

安井

はじめてのコンセプトでしたから、必要としてくれるところもありました。世の中が要求していなかったから、クリアレディのような製品を一番に作ったのは私でしょうね。世の中にないようなものをつくるのが大好きでした。最初は大手の食品系の工場に売りこみました。

和田

アイデアを膨らませて、「こういうものが必要なんじゃない?」と考えるのが好きなんですね。



製造業の事業承継は一筋縄ではいかない

ー事業承継を考え始めたきっかけは?

安井

僕の年齢ですね。今81歳ですが、1、2年前から会社をどうしようというのは考えてきました。もういいんじゃないかなと。

完全に事業をたたむという選択肢も含めて考えていました。でも「やれる人がいれば、やってほしい」という思いもありました。大事にしてきたお客さんを引き継いでほしいという思いがあったんですよね。やっぱり活力がなくなってきて営業を積極的にやらないから、だんだんと売上はしぼんでしまいますよね。しょっちゅう電話したり、出向いたりして、顧客に「どうですか?」と声をかけていかないと、モノは売れませんよね。つくることはできても、年を重ねると営業っていうのは難しいですよ。僕はひとまかせに頼むんじゃなくて、自分で営業をやってきたけれど、この年になったら、だんだんとパッと動きができなくなっていく。疲れてしまうから。

和田

7、8年前に事業承継を検討したことがあったとうかがいました。

安井

若い子が、ぜひやりたいとやってきたことがありました。ところが、やってみたら、とても難しくてできないと、あきらめちゃったんだよね。

商社だと事業を渡しやすいけれど、製造業というのは、私のように若いころからやっていると、材料だのなんだのすべてのことが頭に入っているわけですよ。材質からなにからね。プラス技術のこともわかっていないといけない。材料専門のところに発注する、それから加工する、そういうのを全部指導できないと難しい部分もある。だから、やりたいと思って手を挙げても、やりきれなくてあきらめちゃう。

私のようなたたきあげの人が今はいないから、そこが苦労すると思う。

2社の出会い

ー今回はボルブコンサルティング(株)にとってあとつぎ事業1号案件ですよね。どんな会社を探していたのですか?


和田

買い取らせてもらっても、弊社のコンサル事業をやりながら二足のわらじ的な感じでやっていくことになるので、新しい経営者が当然必要になるんです。そこにたくさんの人件費をかけていくというのは、あまり経営的にもよくない、難しいだろうということを考えて、比較的少人数で承継しても、ちゃんと起ち上がるビジネスを前提としています。つまり、経営者側に依存してしまうビジネスだと難しいんです。私のコンサルキャリアの中で、多く関わらせていただいてきた製造業だと、モノがあるので、モノをしっかり承継できれば、モノがビジネスをうまくつないでくれるんじゃないかということで製造業にフォーカスして探していました。

日本カーヴィングさんは、主軸製品があって、製品にとっての歴史があって、技術面から競合を調べたときも少なく、ニッチ商品である点が魅力的でした。

ーMA仲介会社を介して初めての面談が実現するわけですが、お互いの第一印象はいかがでした?

安井

人柄というのを見ていました。和田さんの第一印象はよかったです。「よし、やってやろう」という意思の人が好きですね。そういう人に質問されれば、僕の経験した色んなことを教えてあげたいと思っていました。

和田

私は商品に対して、熱い想いを語られていた印象がありますね。あと最近は営業をしていないっておっしゃっていたのも覚えています。

 

<編集後記>

「殺菌乾燥機」というニッチな商品を安井さんという経営者が牽引して成長した小さな会社の物語。
そして弊社子会社との事業承継にいたるまでのご苦労を聞かせて頂きました。対談インタビュー②では事業承継を通して経営者という新しいキャリアを歩み始めた現代表取締役の紹介、そして事業承継後の現在地をお伝えします。